なぞのばしょ

三日坊主

FINAL FANTASY XVには、全てがあった。

 

 

FINAL FANTASY XVというゲームは、不愉快で、不細工で、不親切で、不足している作品だ。

 

 

ファイナルファンタジーシリーズのファンとして、ゲームのプレイヤーとして、それから消費者として、私はこのゲームを許すことができない。プレイしながらここまで嫌な気持ちになったゲームはなかなかない。

 

過剰なストレスにより頭がおかしくなってしまった様子

 

どうしてこうなってしまったのか、FF15がどういうゲームだったのか、自分の気持ちを整理しながら書いていこうと思う。

 

 

バチバチにネタバレをするので気になる方は注意してください

 

 

 

ストレスと、その着地点

FINAL FANTASY XVというゲームを一言で表現すると、「押し付けがましい」だ。

 

このメッセージはゲームを起動して注意書きが出た後、一番最初に見せられるものだ。SQUARE ENIXのロゴよりも前に見せられる。しかも一度きりではなく、ゲーム起動時毎回見せられる。

この時点で相当嫌だが、その直後に行われるのが、黒い服を着た男4人が騒ぎながらStand By Me(本当にあのStand By Me)をバックに車を押すシーン。

ギャグでやっているのかと疑うがどうやらそうでもないし、ここで電源を落としてGEOに向かったプレイヤーがいたとしても責められない。このゲームはまず開幕で心を折りに来る。

 

そして最初から最後まで通して一つもプレイヤーの思った通りにことが運ばない。徹底的にストレスを与えるように作られている。

 

男4人での楽しい旅、が本作のテーマであろうが、そんなものはない。

目玉要素のキャンプはスカスカのマップに点在するキャンプポイントでしかできないし、釣りは時間がかかるだけで面白くない。ドライブは舗装された道しか走れないし、車の操作はボタン一つを押しておくだけと単調だ。そのくせ仲間が途切れることなく雑談したりなどはなく、カーステレオを流しておくだけ。プロンプトが写真を撮ってくれるのは面白い要素だが、戦闘中やシリアスな展開の直後に撮られたと思わしき写真がよくあり、プロンプトは本当に真剣に物事を考えているのかと疑いたくなる。

 

帝国の准将を捉えようと基地に潜入し、計画通り捉えるが、対応する味方の組織に引き渡した瞬間逃げられる(裏切りとかではなく、普通に)。13本の武器を集めるのが目的の一つだと言われるが、半分以上を集めないまま物語は終わる。街を歩くNPC達とはほとんど会話できないし、ここはジャンプで飛び越えられそうだな、と思うような膝くらいの背丈のオブジェクトはもちろん超えられない。サブクエストはおつかいだけで楽しいものはない。

移動がストレスなので、じゃあチョコボでフィールドを駆け巡ろうとなっても、そこかしこに置いてある岩や木、柵のせいで気持ちよく目的地まで走ることができない。チョコボのレンタルにも少額ではあるがお金がかかる。時間制限もある。ファストトラベルは限られた場所にしか行えない。

 

ノクティスの祖国は滅び、婚約相手は死ぬ。イグニスは突如視力を失い、グラディオラスからは理不尽にキレられ、その後も事あるごとにネチネチと文句をつけられる

意味ありげに出てくる四天王は誰も倒さない。

 

プレイヤーが面白いと感じるようなゲーム的要素は全て排除し、溜めに溜めたストレスの着地地点が「やっぱ辛えわ」のシーンだ。

王としての覚悟を決め、自分の死の運命を受け入れたノクティスが最後のキャンプで仲間に本音を打ち明けるシーンだが、そこで返ってくるのは「そりゃ辛えでしょ」という同意だけだ。

仲間は何もしてくれない。既に何かをしていたのかもしれないが、プレイヤーが察することはできない。

 

FINAL FANTASY XVは、本当に全てがうまくいかない。

 

情緒がない

FINAL FANTASY XVでは、ゲーム本編とは別に「バトルチュートリアル」と「ストーリーチュートリアル」が用意されていて、ゲーム開始前にプレイできる。

ゲームの中に上手く組み込むのもテクニックだろうが、サボるんじゃないと思うが、せっかく作った世界観を”◯ボタンで攻撃”のようなメッセージウィンドウを割り込ませて台無しにしたくなかったのかな、という好意的な解釈もできる。

が、そんなことをする割にあらゆる部分がおざなりだ。

 

ミスリルを取りに行くメインクエストではダンジョンに潜ることになる。その最奥でミスリルを手に入れることになるのだが、なんと道のど真ん中に落ちている。宝箱に安置されているわけでも、鉱床から採集するわけでもなく、本当に道のど真ん中にキラリと光る汎用アイテムアイコンが用意されていて、それがミスリルなのだ。

 

ベヒーモスと戦うサブクエストでは、ベヒーモスの巣に向かう道中、赤いドラム缶がこれみよがしに等間隔に置かれている。大自然の森の中の、しかもベヒーモスが寝床にしている巣の道中に、明らかな人工物が人の意思によって置かれている。

 

ダンジョンで目的を達成するとすかさず「ダンジョンから脱出しますか?」の味気ないメッセージウィンドウが飛んでくる。触れると脱出できるファンタジー的装置は一切無い。

王都インソムニアのゴシックな城内にはEXITのピクトグラムがある。

 

中央分離帯とか工事現場とかに置かれてるアレが置いてある。これは栃木県でも見ることができる。

 

現実(私達の世界)のブランドとコラボしていて、ゲーム内の、それもメインシナリオで訪れるような所で「ヴィヴィアンのドレス」カップヌードル」などの単語が強制的に耳に飛び込んでくる。

別のゲームとのコラボクエストもあり、その突入口がフィールドに落ちていて、メインシナリオ中に誘導される。

 

挙句の果てには、物語の終盤、バハムートが突如現れ、世界の真相をペラペラと喋りだす。

世界観の何を大事にしているのかが分からない。リアルでもないし、ファンタジーでもない。そんな不細工さが没入感を損ねている。

 

FINAL FANTASY XVは、全てがちぐはぐだ。

 

どうして私に気持ちよくゲームさせてくれないのか

FINAL FANTASY XVをプレイしていると常に付き纏う感想がこれだ。

このゲームは、とにかくプレイフィールが悪い。

たとえば、主人公がダッシュしているとそのうち疲れて走れなくなる。しかしスタミナゲージのような、主人公の疲労度をプレイヤーが見れるものはない。

操作も癖が強い。

ダッシュと攻撃が同じボタンで、ガードと回避が同じボタンで、ジャンプとオブジェクトを調べたりするインタラクトが同じボタンだ。だから車に乗ろうとしたり、扉を開けようとすると毎回ジャンプするし、ダッシュしようとしたら攻撃を振ってしまい早く移動したい時に限って足止めを食らう。

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誇張ではなく、本当に毎回これが起こる。ぴょんてすなよ

 

それなのに操作はパターンで設定するしかなく、個別にキーバインドできない。

UIも良くない。オプションには「スキルや装備のセットをするゲーム内の設定」と、「サウンドやグラフィック等の環境設定」の二種類あり、それぞれ違うボタンでメニューが開く。ちょっと音量下げるかと思いメニューを開いたらそこにはサウンドの項目がない、のようなことが多々あり、地味にストレスが貯まる。

ファストトラベルをしようとした時も、メニューから直接実行するわけではなく、一度車に戻り、マップを見て、目的地を選択して、それからようやく飛べる。飛べないときもある

 

FINAL FANTASY XVは、ゲームを遊ぶプレイヤーのことを考えて作られていない。

 

 

15ちゃんはちょっと足りない

FINAL FANTASY XVには足りないものがある。それは全てだ。

全てってなんだって思うだろうが、本当に全てが足りない。

オープンワールドを売りにしているくせにマップはスカスカだ。自然と、道と、たまに町しかない。自然も、そのほとんどがコピペに見えるような単調なもので、面白みがない。デッケ~樹木が生えていたり、強いモンスターが跋扈していそうなエリアがあったりはしない。

道も、やたら長くてやたら少ない。基本的に町と町をつなぐ一本の道しかなく、そもそも町が少ない。工事現場のアレとかが置いてあるくらい車での交通が発達しているのに車通りはほとんどない。

 

キャラクターは圧倒的に描写不足だ。

まず、ノクティスと、その仲間3人がどういう関係で、どうして旅を一緒にしているのか、そのほとんどはゲーム中で語られない。

グラディオラスは急にキレてくる。そして急にいなくなる。と思ったらすぐに返ってくる。そしてまた急にキレて、ネチネチとした言葉をノクティスにぶつけるようになる。

グラディオラスにも思う所があるかもしれないし、ゲーム内では相当の時間が経っているのかもしれないが、そのことは描写されないためプレイヤーの目には「急にキレてくる嫌な奴」「しばらく姿を見なかったけど、トイレにでも行ってたのかな?」としか映らない。

 

プロンプトはいいやつそうだ。パーティを盛り上げたりするムードメーカー的立ち位置だったのかもしれないが、盛り上がっているような描写は無いし一行がギスギスしだすとプロンプトも普通に落ち込むので、いいやつそう、以外の印象は無い。

 

イグニスも頼れるやつだが、急に視力を失う。かわいそう。

物語を終えた今、本当は王のブレインとなる参謀で、右腕のような存在にしたかったのだろう、と辛うじて感じ取ることはできるがもちろんそれに足りる描写はない。ストーリー中に急に「軍師」という表現が使われるが、それがイグニスのことだと気づくのにタイムラグが生じる。

イグニスが急に失明してもプレイヤーは大切なものを失ってしまったという絶望ではなく、「かわいそう」という他人事のような感想を抱いてしまう。

 

ノクティスの婚約者であるルナフレーナは誠実な人間ではあるんだろうな、という感想こそ抱かせるものの、ゲーム中でノクティスと出会ってすぐ突然の死を迎える為、長尺で演出される悲劇に全く気持ちが追いつかない。

ルナフレーナの兄であるレイヴスもそうだ。そういうやつがいるんだな、という印象のうちに舞台装置として殺され、なんの感想も抱けないまま退場していく。

 

上記のキャラクターたちは言及があるだけまだ良い。前述の「なんか四天王みたいなやつら」は触れられることなくフェードアウトしていくし、登場すらしないやつもいる。デートイベントも存在するグラディオラスの妹であるイリスは物語終盤になると一切触れられなくなる。

 

キャラクターの描写が圧倒的に足りていないため、物語に説得力が生まれない。

説得力がない上に少目的がコロコロ変わるため、主人公が今何を目的に動いているのか、なぜそうしようと思ったのか、何を為そうとしているのか、まるで理解ができない。

ダラダラとした展開に、達成感のない展開、着地。そもそも描写が十分であったとしても、シナリオはお粗末と言わざるを得ない。それほどまでにライターの実力が足りていない。足りていないどころか、プロのレベルに達していないとすら感じる。

 

戦闘も爽快感がない。手応えもない。シフトブレイクを連打し、やたら固い敵を殴り続けるだけ。体力が減ったら確定発動のポーションを飲めばこちらが倒れることはない。

ただ時間がかかるだけの作業であり、ゲーム性は感じられない。

 

単調な探索、ついていけないシナリオ、めんどくさいだけの戦闘。

FINAL FANTASY XVには、カタルシスがない。

 

 

 

もし、「やっぱ辛えわ」が幾重にも積み重なるストレスを乗り越えたプレイヤーの心情をメタ的に表現したユーモアだったとしたら、

開発陣とファイナルファンタジーというブランド全てを賭けた、一世一代の一発ギャグだったとしたら、どれだけよかっただろう。

 

FINAL FANTASY XVには、あってはいけない全てがあった。

 

もう二度と、こんな悲しいゲームが生まれませんように。